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狼に囚われた姫君の閨房録
第31章 新選組、敗走
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一月七日の日が暮れた頃。
大阪城の門が人馬の音で騒がしい。新選組が到着したらしい。
いてもたってもいられず、私は大手門に急いだ。
傷だらけで隊服もボロボロの隊士たちが、篝火の焚かれた庭に座り込んでいる。
主計と利三郎は葉が落ちた大木にもたれていた。
「ぼろ負けしちまった……」
私が駆け寄ると、利三郎がぼやいた。煤にまみれたほおに涙が伝った跡があった。
「あんな大砲、反則だぜ。御香宮神社から伏見奉行所を狙い撃ちだ。ふつう、届くかよ?」
奉行所が炎上したことは、私の耳にも入っている。
「……それだけじゃないです」
星が瞬き始めた空を仰ぐと、主計は重々しく口を開いた。
「淀藩が寝返りました」
「え?」
そんなバカな!
淀藩の藩主は江戸城の老中ではないか。
「事実ですか?それは」
「疑うなら、淀城に行ってみろよ。錦の御旗が翻ってるぜ」
利三郎が声を荒げると、
「尊攘派は官軍、佐幕派は賊軍になったんですよ」
主計は自嘲気味に笑った。
新選組は朝敵になったのだ。幕府のために戦っているのに、悪として誅されるのである。
(そうか……だから、慶喜公は……)
私はやっと、その行動の意味を理解した。
今朝、近習から知らせを受けた私は、茫然自失した。慶喜公を軽蔑したし、それに従った容保様にも失望した。
だが。慶喜公は意気地なしでも、怯懦でもなかった。慶喜公の本心は……。
「心配すんな、お嬢。次は大阪城が拠点だ。将軍を総大将に大逆転してみせるからよ」
利三郎の勇ましさが、城内で何が起きてるか知ってる私には辛かった。
大阪城の門が人馬の音で騒がしい。新選組が到着したらしい。
いてもたってもいられず、私は大手門に急いだ。
傷だらけで隊服もボロボロの隊士たちが、篝火の焚かれた庭に座り込んでいる。
主計と利三郎は葉が落ちた大木にもたれていた。
「ぼろ負けしちまった……」
私が駆け寄ると、利三郎がぼやいた。煤にまみれたほおに涙が伝った跡があった。
「あんな大砲、反則だぜ。御香宮神社から伏見奉行所を狙い撃ちだ。ふつう、届くかよ?」
奉行所が炎上したことは、私の耳にも入っている。
「……それだけじゃないです」
星が瞬き始めた空を仰ぐと、主計は重々しく口を開いた。
「淀藩が寝返りました」
「え?」
そんなバカな!
淀藩の藩主は江戸城の老中ではないか。
「事実ですか?それは」
「疑うなら、淀城に行ってみろよ。錦の御旗が翻ってるぜ」
利三郎が声を荒げると、
「尊攘派は官軍、佐幕派は賊軍になったんですよ」
主計は自嘲気味に笑った。
新選組は朝敵になったのだ。幕府のために戦っているのに、悪として誅されるのである。
(そうか……だから、慶喜公は……)
私はやっと、その行動の意味を理解した。
今朝、近習から知らせを受けた私は、茫然自失した。慶喜公を軽蔑したし、それに従った容保様にも失望した。
だが。慶喜公は意気地なしでも、怯懦でもなかった。慶喜公の本心は……。
「心配すんな、お嬢。次は大阪城が拠点だ。将軍を総大将に大逆転してみせるからよ」
利三郎の勇ましさが、城内で何が起きてるか知ってる私には辛かった。
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