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狼に囚われた姫君の閨房録
第31章 新選組、敗走
「将軍が敵前逃亡かよ〜っ」
新八がすごい勢いでおにぎりにがっついた。腹の虫がおさまらず、がつがつと食らいつく。
大阪城の天守である。新選組には炊き出しのおにぎりと汁物が配られていた。
「総大将にずらかられちゃ、喧嘩にもならねえや!」
慶喜公は昨夜遅く、小舟でそっと大阪城を出た。従者は容保様とその実弟の京都所司代。
戦闘中の自分たちを見捨てて、征夷大将軍が戦線離脱した……絶望感は口では言い表せまい。
全ては長期戦を避け、被害を最低限に抑えたい慶喜公の深謀遠慮だ。しかし、誰もそうは思わないだろう。
「やる気なくすぜ、ったくよ!山崎が負傷した意味がねえ」
左之助も不愉快そうに、汁物を一気飲みした。
「山崎どのがケガを?」
お茶だしの私が聞き咎めると、
「探索中……薩摩藩の銃撃を受けたんだ」
湯呑みを受け取った一が答えた。言い方からして、軽傷ではないようである。
「早急にこっちも江戸に戻らなきゃならねえ。富士山丸に乗り込む。それでいいな?親父」
歳三が父を見ると、父は勇ましく頷いた。
勇は肩に包帯を巻いている。完治はしていないが、一刻も早く戦線に復帰したいらしい。 
「江戸に戻ったら、再戦だ。上様もそのおつもりだろう。あのお方が我らを見捨てるはずがあるまい」
拳を握りしめ、言い募る父。
虚しい言葉だった。慶喜公はすでに戦意をなくしたのに。
「……僕も、行きますよ」
入り側で、総司の声がした。
両脇を主計と利三郎に抱えられて、ようやく立っている。痩せ細り、骨と皮だけになったかのようだ。
左之助が小走りに近づいた。
「お前、大丈夫なのか?死にかかってたんだろ!?」
「お互い様でしょ……」
弱々しいが、皮肉な笑いを総司は見せた。
「兄さんたちこそ……よく生きてたじゃない」
「あたりめえだ!くたばってたまるかよ」
新八が勢いよく胸を叩く。
「総司、船に乗れそうか?」
歳三が問いかけると、総司はその場に座り込んだ。立っていられないらしいが、口調だけは勇ましかった。
「……愚問、ですね」
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