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狼に囚われた姫君の閨房録
第33章 江戸城無血開城
慶応四年二月。
新選組が品川の釜屋に逗留して、数日が経った。
昼から霙が降っている。身体の芯まで冷えた。
「お嬢、いるか?」
私が悴む手を火鉢にかざしていると、利三郎が入室してきた。
主計も一緒である。二人とも、洋装に変えている。
「副長の命です。至急、お嬢さんをお連れしろと」
主計が私に手を差し伸べる。私はその手を取って立ち上がる。
「客人だそうです」
「驚くなよ。幕府の要人、勝海舟だぜ」
利三郎が声を弾ませる。
貧乏御家人の生まれながら、旗本に大出世した才気煥発。直弼が締結した日米修好通商条約の折、遣米使節を託されたほどだ。
(勝海舟さまが、なんの用件で……)
二人に連れられて局長室に行くと、細身の男が座っていた。
頬骨は高く、眉は跳ね上がっている。傑物だと評される勝海舟。雰囲気は衰えていない。
「勝様……」
私が挨拶しようとすると、勝海舟は目を細めた。
「すみれ姫、ご壮健で安堵しましたぞ」
「勝様こそお変わりもなく……突然のお越しで」
「勝海舟、今日は天璋院様のお使いでまいりました」
天璋院とは十三代将軍家定の正室・篤姫である。家定亡き後、大奥の総取締りをしている。
私とも、面識はあった。
家茂将軍を推したのは亡父の直弼だ。家茂の遊び相手をした時に、天璋院篤姫とは顔を合わせていた。
「お前にしてほしい仕事があるんだと」
対座していた歳三が言った。
「江戸城に来て欲しいとの思し召しだ」
「今すぐでございますか?」
「その時に、お迎えの駕籠を差し向けます。本日はお知らせにあがりました」
私は歳三を見た。歳三の許しがないと、どこにも行けない。
「行けよ。俺たちは甲陽鎮撫隊として、甲州に向かう。お前を連れて行けねえし、置き去りにもできねえからな」
「また、戦に……」
「勝どのが武器や資金を揃えてくれた。薩長は俺たちの息の根を止めなきゃおさまらねえらしいからな」
「甲府城攻略の暁には、近藤どのに甲府城城主にと考えております。話した時の近藤どのの喜びようはなかったですな」
意気揚々と告げる海舟を、私は不思議なものを見る目で見ていた。
どうも、妙だ。
勝海舟は平和主義ではないか。なのに、なぜ武器を新選組のために用意するのだ?
しかも、甲府城を父に与えるという。褒美にしては、気前が良すぎないか?
「それでは、手前はこれで」
勝海舟は立ち上がった。
「またお目にかかりましょう」
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