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狼に囚われた姫君の閨房録
第33章 江戸城無血開城
「頂戴致す」
西郷は黒塗りの茶碗を両手で包むと、厳かに口をつける。
作法通りの流れるような所作。さすがである。
「本日の用向きは……降伏の勧告でございますか?」
舌が引き攣る。だが、私は切り込んだ。
「そうだと申しましたら?」
すかさず切り返す西郷。
「……いやとは言えますまい」
私は両肩を震わせた。
天璋院さまも和宮さまも口を挟まない。全てを託されている。
「江戸市民の生命がかかっております。なれど、その代償を伺いとう存じます」
「たとえば、御三方のお命を頂戴するとかでござるか?」
「そうです」
「それは叶わぬこと」
西郷は茶を静かに味わう。
「力なき者に手をかけるは武人にあらず。篤姫さまは島津公の姫。和宮様は亡き帝の妹姫にあらせられる。お命を危うくするなど、畏れ多い。ましてや!」
西郷は声を張り上げた。呼応するように、雷鳴が轟いた。
「すみれ姫は新選組にとって大切なお方。あなたさまの命を奪うことは、新選組を刺激することに他なりません」
「勝さまが新選組に甲州行きを命じたのは、江戸から遠ざけたかったがためなのですね」
「ご賢察、痛み入ります」
新選組は幕軍の心の拠り所となっている。池田屋事件に蛤御門の変。新選組の武勇談は枚挙にいとまがない。
だが、それでは困るのだ。
全面降伏をしようというのに、血気盛んなものたちがいては、おさまるものもおさまるまい。
事は決していたのである。
ならば、私のすべきことは……
「お気持ちをお受け致します」
私はその場に手をつかえた。
「どうか、お心のままに」

翌日、勝海舟と西郷隆盛の歴史的会談により、徳川幕府は無条件降伏をすることになった。
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