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狼に囚われた姫君の閨房録
第39章 鶴ヶ城の悲劇(後編)
私の薙刀が新政府軍を薙ぎ払う。血飛沫が孤を描く。
勢いで、後ろの敵を袈裟懸けにする。相手は声もなく絶命した。
「おのれっ」
敵は歯軋りして、二人まとめて襲いかかってきた。
私は二人の後ろに瞬間移動した。標的を見失った二人の背中を斬りつける。
一撃!二撃!!
小柄な男が崩れ落ち、大柄な男が重なって崩れた。
(どれだけ斬ったか……)
息が上がり、肩が上下した。薙刀を振るう腕が痺れ、声を上げる力もない。
だが、私は敵を斬り続けた。
「すみれ姫さま!」
死装束の全身に返り血を浴びた竹子が駆けてきた。
「斎藤一さまのいどころがわかりました!!」
「なんとっ」
「如来堂に追い詰められ、敵に囲まれております!」
「数は?」
「新政府軍は二百。立てこもった新選組は二、三十人ほど!」
私は胸を抑えた。やっと一の消息が掴めたのに、追い詰められているとは……!
「姫さま、斎藤さまの元にお行きなさいませ!」
「バカな!戦場で私情を挟むなど……」
「私情ではありません。窮地に陥った味方を救うのでございます」
「……っ!」
遠くからの殺気に私が反応したのと、竹子が私を突き飛ばしたのが同時だった。
銃声が一発轟いた。
竹子は額を撃たれ、宙を舞った。半回転して、斜面を転がった。
「竹子どの〜っ」
私は急斜面を駆け下り、竹子を抱き上げた。
「気をしっかりもつのじゃ!傷は浅いぞえ!!」
嘘である。眉間を撃ち抜かれているのに、助かる術があろうか?
「姫……好きな殿御のところに……早う……」
言った後、竹子は絶命した。
恋すら知らずに戦場で散った花一輪。私にその代わりをしろというの?
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