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狼に囚われた姫君の閨房録
第41章 歳三、北に散る
五月十一日。
函館湾の戦いで砲弾を使い果たした幕府軍は弁天台場に籠城した。大鳥や主計ら新選組も含まれていた。
「救助に向かう」
歳三はわずかな兵に命じると、黒毛の駒に跨った。
その姿は在りし日の一や左之助、総司らと重なった。
「ご一緒します」
乗馬服にサーベルを腰に差した私も、白馬に乗った。
「生きて帰れる保障はねえぞ」
「わかっております」
弁天台場は官軍に囲まれ、蟻が這い出るすきもない。逃げ場はなかった。
救援も不可能だということなのだ。
「お連れください」
「勝手にしろ!」

しばらく馬を走らせた歳三は、一本木関門のところでたたらを踏んだ。
小鳥の囀りもしない。大多数の殺気で満ちていた。
「……兄上さま!」
私の全身に鳥肌がたった。待ち伏せか!
物陰に隠れてはいるが、その数、四十か五十!!
歳三の形のいい唇に、冷血な笑みが刻まれた。
「読まれてたってことか」
味方の兵たちが抜刀して身構えた。歳三も空中に高々と刃先をあげる。
「死に物狂いで駆け抜けろ!無駄死にはするな!!」
「おおう〜っ!」
「突撃!」
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