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狼に囚われた姫君の閨房録
第44章 復活、新選組
月明かりと雪で浮かび上がる庭先。苔むした庭石に近藤勇の首は置かれていた。
「くっ、ふう……」
三樹三郎は唇を噛み締める。近藤の首は蒼白い光で包まれた。
「……くぅ……」
あまりの苦痛に、三樹三郎が掴む近藤の頭に爪が食い込んだ。
顔面蒼白だった。こめかみを伝うのは冷や汗。奥歯を噛んで苦痛を耐える。
「おい、大丈夫かよ?」
三樹三郎の手に自身のそれを重ね、力を注ぎながら新八が尋ねると、
「大丈夫なわけ……あるか……気ぃ入れやがれ……近藤が蘇らねえ」
苦しそうだが、三樹三郎はなんとか答えた。
三樹三郎は生命力の半分を近藤に注いでいる。生命力が尽きないように力を注ぐのが新八の仕事だ。

「む………」
勇の唇から呻きが洩れた。目が開き、手足が伸びた。
佇んでいたのは、在りし日の近藤勇その人であった。
「おやっさん!」
「新八か?」
新八の声に応える野太い声。不貞浪士が聞くだけで震え上がった勇の声だ。
新八は涙ながらに近藤にしがみついた。ガッチリと新八の肩を掴む勇。
言葉にはならない男同士の想いがそこにはあった。
「は〜っ、こっちが死ぬかと思ったぜ」
汗だくの三樹三郎は雪の上に大の字に寝そべった。
「鈴木くんかっ。よくやってくれた!!本当に君が力を貸すとは!大老はああおっしゃっていたが、実を言うと心配していたのだよ」
近藤勇が三樹三郎に駆け寄って膝をつくと、
「真っ正直を絵に描いたような人だな。なんで、あんたみたいな人が人斬り集団の親玉だったのかねえ?」
三樹三郎が呆れ半分で苦笑すると、新八が複雑な顔で近藤の肩に手を置く。
「あのなあ、おやっさん。そういうところは死んでも治んねえみてえだな。ま、いいけどよ」
何が悪かったのか、勇はわからないという表情だ。
三樹三郎はククッと笑うと、起き上がった。
「で、これからどうすんだよ?新選組の連中を生き返らせるんだろ?」
真顔になる近藤勇。
「それは任せてほしい」
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