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狼に囚われた姫君の閨房録
第44章 復活、新選組
耳をつんざくほどの爆音。空が薄気味悪いほど、赤茶色に明るくなった。
「あの方角は……まさか……」
一が呆然と腰を浮かせた。
土塀越しに向けた視線。日本一の霊峰がある方向だ。
「……富士山が噴火なんて言わないでよ」
総司が笑い飛ばすが、さすがに声が震えた。横で、平助が生唾を飲み込んだ。
「バカ言うな!そんなこと、あるわけ……」
「ないとは言えません。宝永(一七〇四年)にも富士山は噴火しています」
山南が説明すると、左之助が目を丸くした。
「だからって……ちょうど良すぎねえか?すみれの話をしてた時だぜ」
左之助はハッとした。顔から血の気が引いていく。
「すみれか?これも、すみれがやってんのか!?」
「バカ言ってんなよ!人間技じゃねえだろう。自然現象に決まってる!!」
新八が拳を握りしめて叫んだが、同意する者はない。
太陽が昇らない空に、富士山の時ならぬ噴火。偶然の賜物であるはずがない。
静まり返った室内に、三樹三郎の声が響いた。
「すみれを見つけなきゃ話にならねえな」
「居場所の見当はついています。おそらく、江戸城」
「根拠は?」
山南の言葉に、歳三が口早に尋ねる。
「聞いたことがあるでしょう。神君・家康公の眠る日光東照宮と富士山は一本の結界で結ばれています。要にあるのはなんです?」
「江戸城か!」
声を揃えて上げたのは総司と一だ。
「なるほど、決まりだな」
勇が胡坐した膝を叩いた。
そして、居ずまいを直す。
「新選組局長として、命ずる!すみれを生かしておくな。見つけ次第、息の根を止めろ!!」
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