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オレンジ色の世界で。
第3章 母の皮を被った名探偵。
「――と、友達から譲って貰ってるんだよ。クラスの友達同士で、貸し借りして、ぐるぐる回してるって感じ。自分で買った事は無い。本屋でそう言う本を買うのとか、恥ずかしいからさ」
 さらりと嘘をついてみた。従兄の事は絶対に明かしては駄目だと本能が訴えかけていたのだ。
「クラスの友達でかぁ。まぁ、中学生の男の子ってそういう感じなのかな?――ねえ、たかしくん?」
「は、はい?」
「たかしくんが持ってるエッチな本ってさ、若い女の子とか載ってないよね?どちらかと言えば、母さんと同じか少し上くらいの女の人ばかり。じゃあさ、あれって、要するに、クラスでそう言うのが流行ってるってこと?」
 名探偵の鋭い質問を受け、ぼくはあからさまに狼狽えてしまった。
 嘘に嘘を塗り重ねると、何だか自分を見失いそうになり、上手く呼吸出来なくなってしまう。
 だってそれはクラスの友達の趣味でも流行りでも無くて、ただただ従兄の変質的な嗜好なのだから。

「ああ、うん、そうだね、クラスの男子の流行りかな。最近の中学生ってそう言う感じなんだと思う」
「ふうん、若い頃は年上に憧れるって事なのかな?それでさ、たかしくん?母さん、ひとつ聞きたい事があるんだけど?」
 もう何個か質問に答えているのに、その上で母はひとつ聞きたい事があると言う。
 ここでぼくは腹を括ったわけだ。多分、今からの質問こそが母が本当に聞きたい事なのだろうと、思い。
「で、何が聞きたいの?」
「男の子って、エッチな本見て、興奮しちゃうでしょう?」
「そ、それはまぁ、普通は、そうだよね」
「それで、どうするの?」
「は?どうするのって?」
「いや、だから、それは、たかしくんもさ、他の男の子みたいに、自分でしてるのかなぁ?って思って……」
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