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オレンジ色の世界で。
第3章 母の皮を被った名探偵。
 この時、ぼくは漸く察するに至った。
 母の皮を被った名探偵は、恐らく、ぼくがオナニーし捲っている事を知っているのだ。
 極力両親がいない時にする様にしているのだが、どうしても性欲を爆発させたい時は突然やって来てしまうから。
 両親が在宅時でも、たまには食後に自室で、たまには風呂場でしっぽりとやってしまう時がある。
 そう言う時は、警戒を怠らず、確実に事後処理をしてるつもりだったのだが……母の鋭い目や嗅覚から逃れ切る事が出来なかった、ということなのだろう。

「――じ、自分でしてるよ。でも、それって別に変なことじゃないよね?皆やってる事だと思うし」
「うん、そうだね。だから、別に母さんは、たかしくんを責めてるワケじゃないよ?ただ、興味があっただけ。母さんずっと女子校だったから、中学生くらいの男の子がどう言う風にしてるのか、全然知らなかったから」
 そんな事知ってどうするんだよ!?と、これはぼくの心の叫び。
 それから母は、嬉しそうに微笑みを浮かべつつ、再び漫画を読み始めた。
 ぼくには母の真意が全く分からなかった。
 それでも何となく思う事は、恐らく今交わした会話の内容を、母は仲の良い友達とか親戚に話してしまうのだろう、ということ。
 ぼくは、昼間の母の動向を殆ど知らないが、母には母のネットワークがあり、今晩ぼくが晒した情報はそのネットワークに乗り様々な場所で笑い話へと昇華するのだと思う。
 そうなると、ぼくばかり醜態を晒して狡いじゃないか、と思ってしまう。
 そして、母からも何か醜態めいた話を聞き出せば、母のお喋りを止めれるかもしれない、とそう考えるに至ってしまった。
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