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オレンジ色の世界で。
第4章 エロビデオ鑑賞会。
 また、少しの沈黙が生まれていた。それから。
「――ねえ、たかしくん?」
「はい」
「今の話、嘘だからね?」と、母は笑いを堪えながら言う。
 からかわれた?いや、それって道徳的に絶対してはいけない、からかい方だと思う。
「ねえ、母さん?今の嘘はさすがに、酷いと思う。ぼく、本気で心配しちゃったし」
「あ、そんなに心配してくれてたんだ?それより、たかしくん?」
「なに?」
「いや、あのさ?この女優さんって、完全に、母さんに似てるよね?たかしくん、このエロビデオ観てオナニーしたの?」
 そして、母は悪びれる事無く、再び名探偵ぶりを発揮する。
「え?そうかな?母さんに?」
「似てるよ。どう見てもそっくりじゃんか。って、まぁそれはどうでも良くて、ちょっとお願いがあるんだけど、いい?」
「お願い?」
「いやね、実はね、母さん、たかしくんがさ、オナニーしてるところを、見てみたいんだけど、ダメかな?」
 その母の突拍子もない問い掛けに、それは駄目だろう、と思った。
 いや、これは母だから駄目とかでは無くて、オナニーしてる所なんて誰にも見られたくない!という思いがあったのだ。
 学校で、クラスのヤツから、母親とか姉や妹に、偶然見られてしまったと言う悲惨な話は何度か聞いた事があったけれど、敢えて母親にオナニーを見せびらかすなんて聞いた事が無い。

「――それは、ヤダよ。恥ずかしいもん。見せたくないよ」
「えー、いいじゃんか。一回だけ。誰にも言わないから。母さんはさ、たかしくんがオナニーしてる所を超見たいの!」
「ねえ、母さん?それはちょっとおかしいと思う。そんな事聞いた事無いよ?エロビデオを一緒に観ようって言い出した時点でなんか変だと思ったけど、オナニー見せてはちょっと異常だよ」とぼくは、少し強い口調でそう言い放った。
 異常とか正常の前に、本気でオナニーしてる所を見られたく無かったのだ。
「うーん、あのさぁ、たかしくん?」
「なに?」
「母さんの、幼馴染みのヨシコちゃんっているんだけどね、そのヨシコちゃんの子供がさ、たかしくんと同い年の男の子なんだけど……」と母は、なんだか改まって語り出した。
 そのヨシコちゃんには、ぼくも何度か会った事がある。
「ヨシコちゃんの息子の筆おろしをね、ヨシコちゃんがしちゃったんだって」と、母は言う。
 それを聞きぼくは「筆おろしって?」と問い掛けた。
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