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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
「おはようございます、ケイゴさん」
「おはよう、シズカさん」
「そろそろ、ベッドを片付けたいので起きてくれますか?」
「綺麗好きのシズカさんは、乱れ汚れたベッドを何時までも放ってはいれないんだね?」
「うふふ、なんでさん付けなんですか?まぁ……それもあるんですけど、実はさっき主人から連絡がありまして……」
「不倫してた旦那さんから、連絡がありまして?」
「はい、仕事の資料取りに家に戻って来るって……」
 シズカは僕の目を見詰めながら、さらりとそう呟いていた。
 自分の言っている内容をちゃんと理解出来ているのだろうか?まるで他人事であるかの様な語気だった。

「それって、結構大問題なんじゃない?旦那さんは後どのくらいでご帰宅なんだろう?」
「七時過ぎには着くと思うって言ってました」
「今何時何分か知ってる?」
「六時三十五分くらいですかね?」
「えーっと、うーん、まあ、ここまで悠長だと、逆に笑えてくるね」
「うふふ、三十分あれば、何とか片付けれるかと思って。ケイゴさんもお隣さんだから、すぐ帰れますし」
 しかし、その浮世離れした悠長さのお陰で一気に目は覚めた。
 気怠さも吹き飛んでしまっている。
 僕がベッドから下りると、彼女は主婦の本領を発揮してテキパキとベッドを片付けだした。
 緑色のワンピースは体の線も出ないし、あまり魅力的には見え無いが、ミディアムヘアを後ろで小動物の尻尾の様に一束にしているのは、中々好印象だった。
 あと、無駄な動き無くベッドをメイキングして行く所作は、流麗でその道のプロであるかの様に見えてしまう。改めて素敵な女性だと感じていた。
 暫くこのまま熱いコーヒーでも飲みつつ彼女が家事に勤しむ姿を眺めていたいと思ったが、残念ながら僕にはそんな優雅に時を楽しむ時間は無い。
 いつの間にやら綺麗に畳まれていたシャツとジャージを手に取り、部活終わりの中学生の様なスピードで身支度を整えた。
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