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ペリドット
第2章 ふたりの少女。
「あの、もしかして、東京に来る事オジさんとかに内緒なのか?」
「友達と東京に遊びに行くって行って来た。ホンマは元カレとラブホに泊まる予定やったんやけど、こうなったらケイゴのトコに来るしか無いやん?」
「うーん、なんか上手く利用されてるだけな気がして腑に落ちない事が多々あるけど、そう言う理由があるなら。まぁ仕方無い。明日には帰るんだろ?」
「うーん、どうしようかなぁって思ってんねん。キタナイ部屋やったら朝一で帰るつもりやったけど、ココまぁまぁ居心地良さそうやし、一週間くらいはおったってもええかなぁって。オトンとオカンにはケイゴんトコにおるって言えば何とかなるやろうし」

 いやいやいや、一週間?おったってもええかな?一体それは何語なんだ?何処で教えて貰える言葉なんだ?全く以て理解が出来ない。
 そりゃ、遥々東京にまで来て彼氏と別れてしまった事には同情するけど、だからと言って僕の家に長期滞在させる気にはならないし、もっと言えば一泊させるだけでも涙を流すくらいに感謝して貰いたいくらいなのに。
 取り敢えず、今揉めたら面倒な事になるだろうから、明日朝直ぐにオジさんに電話して迎えに来て貰う事にしよう。
 じゃないと折角の休暇がユミに滅茶苦茶にされてしまう。

「なあ?ウチ、朝から何も食べてへんからお腹減ったんやけど?」
「お腹減ったって言われても。ピザでも頼むか?」
「ピザはちょっと重いなぁ。コンビニで何か買って来て」
「買って来てって、僕が?」
「ケイゴ以外に誰が行ってくれんの?」
「アト、明日の朝ゴハンとジュースとアイスと歯ブラシとコンタクト洗うやつもお願い」
「え?あの……え?」
「あぁ、あと何か適当にお菓子も買っといてなぁ。トロトロせんで早よ帰って来るんやで?」
 滅茶苦茶にされるのでは無くて、既に滅茶苦茶なのだ。
 もう僕には彼女に抵抗する余力が残って無かった。
 今はユミの言う事を出来る限り聞いて、一秒でも早くベッドで深い眠りに落ちたい。泥の様に眠りたい。
 
 僕はスーツ姿のまま外へと出ていた。空には綺麗な月が昇っている。
 気を抜くと涙が溢れ落ちてしまいそうだった。
 そう遠くは無い筈のコンビニまでの道程がいつもの何倍にも長く感じてしまう。
 二三歩進む度にため息が溢れてしまっていた。
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