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スカーレット オーク
第22章 22 ペンションの朝
 うっすら日が差し込んで光で緋紗は目が覚めた。――ん?どこ、ここ。
 ハッとして起き上がったが直樹はいない。
慌てて支度をし、宿泊客がいるので音をたてないようにこっそり階段を降りた。

 厨房の扉を開けて、「遅くなりました。すみません」と緋紗は声をかけた。

「おう。おはよう。慌てなくてもいいよ」

 和夫が優しく言った。

「ひさ、おはよう」

 直樹ものんびり言う。

「あ、おはようございます」

 起こしてくれてもいいじゃないかと直樹に言いたかったが和夫もいるので黙ってエプロンを身に着けた。

「何をしたらいいですか?」

 とりあえず仕事をしなくちゃと和夫に聞いてみる。

「うーん。うちの女王様もまだだしな。みんなの朝飯でも用意してもらおうかな。直樹ちょっと教えてやって」
「はい」

 無機質な返事の直樹が緋紗に指示する。

「ここにトーストとコーヒーがあって……」

 夜、二人の時の直樹と違って淡々としている様子に戸惑いながら緋紗は言われたとおりにまずコーヒーの豆を挽き始めた。

「おっはよー」

 明るく華やかな声が聞こえたかと思うと、小夜子が優雅な雰囲気で登場した。

「おはようございます」

 緋紗が挨拶すると小夜子はにっこりして、「ここで一緒に食べましょうよ」と、誘う。
和夫も、「ほとんどもういいから飯にしちまおう」 と、手を止めて直樹にも座るように促した。
緋紗はまだ緊張して厨房の片隅のテーブルに食事やコーヒーを運んだ。

「ゆっくり食べていいからね」

 そう小夜子に言われたがすでに緋紗は和夫と直樹同様に食べてしまっている。

「早いわねえ」

 まだ半分も食べ終わってない小夜子に言われ、「早く食べる癖がついてしまって……」と、言い訳のように言った。
和夫が、「弟子ってやっぱり大変なのかい?」と、尋ねてきた。

「そうですね。楽ではないです。肉体労働がほとんどですし。作品を作るのに追い込みがかかっているときはご飯を食べる時間も惜しんでって感じです。でも食べないでやってもイライラしていいものができないから絶対食べますけどね」

 ふんふんと和夫は聞きながら、「下積み時代ってなんでも大変だよな。でもそれをやってるのとやってないのじゃ人生全然違うからな。頑張れよ」と、緋紗を激励した。

「はい」

 緋紗は明るく返事をして食器を下げた。
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