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スカーレット オーク
第50章 50 窯焚きハイ
 街灯もろくになく、月明りで何とか目の前の道が見える程度の明るさだ。
それでも緋紗は慣れた道なのだろう飄々と歩いている。

「遅くなっちゃいましたね」
「うん。こんなに夜更かしするのも何年かぶりだよ。同窓会ですら十一時には帰ってたしね」
「健全ですね」

 二人で笑った。

「みんな若そうだったけどもう結婚してるんだね」
「備前って女の人が少ないから見つけるとパッと結婚する男の人多いですよ。谷口君なんか入院した時の担当の看護師さんと結婚しましたもん」

 緋紗は面白そうに言った。

「へー。じゃあ緋紗も引く手あまたかな」
「あはは。同期の女の子はみんなモテてましたけどねー。私はイマイチです。女らしくないからでしょうね」
「なるほど」

 納得している直樹に怒ることなく緋紗は機嫌よく笑っていた。

「谷口君とは仲いいんだね」
「同期なんです。陶芸学校の。親友みたいなもんです」
「そうか」
「直樹さんは窯焚きどうでした?」
「なんかすごく良かったよ。あんなに高温の火を焚き続けるとテンションも高くなるだろうね」
「でしょ?」
「鈴木さんが大昔の窯焚きの話をしてくれたな」

 しゃべりながら歩いているとホテルが見えてきた。

「じゃ直樹さん、おやすみなさい。お疲れ様でした」

 ぺこりと頭を下げて緋紗はふらっと帰ろうとする。

「ちょっと待て、緋紗」

 直樹は緋紗の手をつかんだ。

「危ないだろ。一人でこんな夜道」
「え」

 緋紗はきょとんとしている。

「もうすぐそこなんで大丈夫ですよ」
「いや。送るよ」
「えー。そうですか?ありがとうございます」

 緋紗は機嫌よく頭を下げた。――危なっかしいな。
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