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魔王様の寵愛
第1章 魔王様の御迎え。

 「はぁ-···、疲れた」

 今日も今日とて残業でアパートに着いたのが夜の10前。
明日は休みな事もありスーパーで食材を買った。明日が休みだと思えば心無しか、重い荷物も少しは軽く思えた。階段を上り、自分の部屋を目指す。明日は何をしようか、洗濯物をして、コーヒーを飲みながら本を読んでのんびり過ごそうか。それとも、撮り溜めた映画でも観ようか。半ばウキウキ気分で階段を登りきり、角を曲がりいざ自分の部屋の前へ。

  前へ···。

 「···。」

 そこで私は今の現状に絶句した。
  誰だ、あの外国人は。
 正直、面倒臭い事に巻き込まれかねない状況に言葉にならない。自慢じゃないけれど、英語なんて「ハーワーユー?」くらいしか話せない。いや、この状況だと「あーゆーおーけー?」···か?頭が残念な私はこれには困った。私があーでもないコーデも無いと唸っていると、外国人は私の気配にこちらを向いた。

 それはもう、私を見た瞬間に、やたらキラキラした表情で。

  (うわぁー···、何だかとっても面倒臭そう!!)

 半ばパニクりながら後ずさると、外国人は両手を広げこちらへ来るではないか。え、ちょっと待ってあなた誰!?

 「!!···あぁ、ユカ!···どれだけ捜した事か。やっと見つけた!!」

 「!?··えッ、いやちょっとッ!!?」

 気が付いた瞬間には、私彼の腕の中へ。
 抱き着かれた衝撃で驚いた拍子に瞑った目をゆっくり開ければ、私の視界は彼の胸板(もちろん服は着ている)で覆い尽くされていた。食材の入ったビニール袋は見事に手から滑り落ちて地面と御対面である。卵が入っていなくてよかった。

 じゃなくて···。

 「ちょっと!!··、なんなんですかッ!離して下さい!」

 私はグイグイと彼の胸を押したのだが、逆に背中に回された腕に力を込められてしまい。更にきつく抱きしめらられてしまった。


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