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魔王様の寵愛
第1章 魔王様の御迎え。

 これは···?夢だろうか。
 私が忘れてしまった、小さな頃の夢。
 蜂蜜色をしたふわふわした髪型。
 澄んだ海のような碧い瞳。
 男の子、だろうか?
 まるで中世ヨーロッパのような服を来た小さな男の子の前に、瞳の上で切りそろえ、腰まである長い真っ直ぐな黒髪の少女が見える。微かに覚えのある姿。あれは、···私?

 そう思った瞬間、柔らかな温かな風が吹く中で、気がつけば幼い頃の彼が目の前にいた。彼は自分の胸の前で、ペンダントを握りしめ、泣きそうな表情でこう言った。

 「ありがとう。君のおかげで帰れるよ···」

 「ほんと!?···よかった」

 「···うん」

 「もう、みちにまよわないように、おまじないをしてあげる」

 「まじない?それって魔法みたいな事?」

 「うーん。わかんない!」

 「えっ!?」

 「でもね?ユカのママはユカがよーちえんにいくときに、かならずおまじないをしてくれるの。ユカがきょうもげんきでぶじにかえってきますようにって!」

 「てことは、僕も君の所に戻らなくちゃならないって事?」

 「あぁ!そうだね。ふふふ、なんだかおかしいやでも···ここにはかえらなくていいんだよ?とおいくににいくのは、パパがたいへんっていってたから、わたしはおみおくり」

 「いや、必ず君の元へ戻って来るよ。今度は、君を迎えに行く。僕の花嫁になってよ···ユカ」

 「うん!わたし"    "のお嫁さんになる!」

 この時の私はその意味を、理解などしていなかった。
 彼は私の前に跪き碧瞳を蜂蜜色のまつ毛で塞ぐと、私の手をとり手の甲にキスをした。するとキスをされた手の甲に、刻まれたかのようにクロユリの紋様が浮かび、やがてすぅー、っと、消えて行った。

 「この契約は君が他の男に抱かれれば破棄になる。···どうかその純粋さ、優しさを無くさないで」

 「だっこ···?うん。···きをつけて、いってらっしゃい」

 「ちょっと違うけど、···必ず君を迎えに行くから!」

 彼はキラキラした粒子に呑み込まれて行く。


 え、ちょっと待ってよ。
 ここで終わり?辺りか明るくなり、小さな頃の私達が見えなくなって行く。

 そうして、私の意識は浮上した。



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