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第16章 桜の下で

少し時間が経てば気持ちよさそうに眠る光春さんの寝息が耳に届き、私は光春さんの眼鏡を外して頬に手を添えた。
光春さんのことが愛おしくて頬を撫でていると、身体の向きを変え腰に手を回して抱きついてくる。
そして、顔を摺り寄せてきたと思ったらそのまま深い眠りに落ちていった。
その光春さんの髪の毛を撫でながら、とても穏やかな時間を過ごした。
時折り通り過ぎていく春のうららかな風は心地よくて、空からは優しい日差しが降り注ぎ、私も次第と瞼が重くなる。
いつのまにかコクリコクリと頭を揺らし眠っていた様で、目が覚めた時には光春さんも目を覚ましていた。

「ふふっ、こんなに天気が良い日は眠くなりますね」

「そうですね。眠るつもりはなかったんですけどね。この陽気と汐里の膝枕でうとうとしてしまったようです」

起き上がった光春さんは一度背伸びをしてコーヒーの準備を始めた。
私も手伝おうと立ち上がろうとした時、足が痺れていたのかバランスを崩して倒れそうになった。