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粗治療
第1章 きっかけ
この人は僕の担当ナースらしい
とはいえまだ研修中で採血など医療行為はできないそうだ

だからいつも決まった時間にきて
身動きのとることができない僕の身の回りのことを整えていく

窓を開けて空気を入れ替え、布団を整え
気分はどうか、食事はとれているかと問いかける

そうして一連の流れを終えるとまた静かに去っていく

だが今日は違う様だ

彼女に目をやるとその腕に花束を抱えていた

「どなたかわかりませんが
 名乗らずに置いて行かれましたよ」

入院してもう1ヶ月になるが
今まで一度もこんなことはなかった
どんな人だったか聞こうと思い彼女の顔を見上げた

真っ黒のショートヘアは艶やかで、
きれいにまとめられており
その髪型は崩れることがない

唇にはいつもの薄ピンクのリップクリームがぬられていて、丸い目が優しく僕を見ていた
なんといっても目の下にある涙ボクロが印象的だった

歳は僕と同じぐらいに見えるがわからない
わかると気まずくなりそうで聞く気にもならない
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