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はらぺこ魔王さまのお食事係!【完結】
第5章 【第五話】魔王さま、セラフィーナを攫いに現れる
 セラフィーナはなんと答えればいいのか分からず、唇を尖らせた。
 ルードヴィグはその唇に優しくキスをした。

「セラ」
「ん?」
「話はしたのか?」
「……してない」
「それなら、俺が直接、話をしよう」

 ルードヴィグはそういうと、セラフィーナの腰を抱え、部屋を出た。
 そして真っ直ぐに客間へと向かった。

「ルード?」

 客間へと向かう理由が分からないセラフィーナは、足を止めてルードヴィグを見上げた。
 ルードヴィグはセラフィーナを見下ろし、口を開いた。

「ここにはだれと暮らしている?」
「レンナントとエドヴァルドと……」

 明らかに親とは思えない名前に、ルードヴィグは眉間にしわを寄せた。

「おまえの親は?」
「ここにはいないわ」
「どこにいる?」
「たぶん、お城よ」
「なぜ一緒に暮らしていない?」

 そんなことを言われるとは思っていなかったセラフィーナは、不思議そうにルードヴィグを見た。

「それには、理由があるからだ」

 二人の後ろから、レンナントは声を掛けた。

「セラフィーナさまから離れろ、魔王」
「それは無理な注文だ」
「その方は、魔王が触れていい相手ではない」
「ほう?」

 レンナントとルードヴィグの間に見えない火花のようなものがセラフィーナには見えたような気がした。

「セラフィーナさま、離れてください」
「……嫌」

 まさかの拒否に、レンナントは目を見開いた。

「私、ルードと一緒に行くの」
「セラフィーナさま……」

 セラフィーナはルードヴィグの腕にしがみついた。

「だって私、要らないんでしょう?」
「セラフィーナさま?」
「要らなくて、邪魔だからこんな森の奥に閉じ込められてるんでしょう?」
「それは違いますよ、セラフィーナさま」

 セラフィーナの後ろから、エドヴァルドが現れた。

「ここにいるのは、あなたの身の安全を考えてです」
「そうね、ここは安全よ。でも、それがなんなの? 逃げているだけじゃない」
「セラ、逃げるのも時として必要だ」

 ルードヴィグの言葉に、セラフィーナは首を振った。

「残念ですが、そこの魔王の言葉は正しいです」
「エドヴァルドまで!」
「そもそもあなたのお兄さまは、幼いあなたになにをしましたか」
「そ、それは……」
「それに、他の人も」
「なにをしたんだ」
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