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第15章 神様のイジワル

「裁判になったって…遺族側に

勝ち目なんかないのにね」



砦を失ったかのように

落ち着きを取り戻せない医局では

日々そんな声が聞こえてくるけど





『・・・』


・・・そうじゃ、ない。





オレにはわかってた


浅田先生が…退いたのは

そんな

みんなが口にするような理由じゃない





誰よりも優秀で

誰よりも…笑顔で



天才と呼ばれる程の

神のような腕をもった



浅田先生は

誰よりも…自分に厳しくて


人間の脆さ・・・

体…心の脆さ

その尊さを知っていたんだ。




医者としての責任感や

使命感・・・誇り



そのすべてを背負っている

大丈夫、と言ってくれる…その後ろ姿



他人から見れば

余裕さえ感じさせる笑顔や

穏やかな雰囲気は



きっと・・・それらは時に

プレッシャーや恐怖に負けないように


必死に、必死に作った

その人の∥虚像∥でもあり



その心は

誰よりも優しくて

繊細だったこと