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第17章 大切な弟・・・可愛い妹

・・・なんで？




なんて、頭が真っ白になる気持ちは

ひた隠しに冷静さを取り戻す



なんで、も・・・へったくれもないんだよ




今目の前に起こってることが現実だから




まったくね・・・何年現場にいるのやら

情けないな、なんて気持ちも起こるけれど




翌々考えたら

身内や、身内同然の人が

大怪我して目の前に運ばれてくるなんて

さすがに初めてだったことを思う



『・・・ﾌｩ』



一呼吸おいて・・・切り替える







「家族に連絡とれるか？」




『…僕がしておきます』




ベテランドクターの問いに

サクッと一言だけ返して

ボクは治療に意識を向けた







『アイルちゃん・・・わかる？』




『・・・』



返事をしないアイルちゃん





目の前の患者の意識を

もう一度確める




『アイルちゃん…大丈夫だからな？

頑張ろうね・・・頑張れよ！！？』





ボクは・・・医者だから


目の前にいるのが誰だろうと


やるべき事を・・・


医者の仕事を・・・するまでだ







万が一でも…億が一でも


この子を・・・死なせられない。




そんな…個人感情が

なかったと言えばウソになる



初めて経験する不測の事態に

∥感情的になるな∥の掟が

一瞬…また一瞬

見えなくなっていたかもしれない




それでも・・・




この子は・・・この女性(ひと)だけは


弟から奪いたくない




苦難を乗り越えた弟が


やっと幸せになろうというとき




その弟から・・・大切な人を


奪うことだけは・・・許したくない





弟には・・・




リョウキにだけは・・・





あんな・・・∥悲しい思い∥を



させたくないんだ