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Best name ~ ひまわりとの約束 ~
第18章 弟の・・・覚悟
『あ、兄貴…?今日ってさ時間とれる?』



ミソギ(?)を終えたリョウキが

帰り際にボクに聞いてきた





『うん・・・日勤だから

その後なら空いてるぜ?』





『・・・ちと…話が』





『クス・・・うん。わかった』





『・・・悪いな、忙しいのに』






『(笑)・・・~んじゃ

デリバリーで良いから

イタリアン、コースで用意しとけよ♪』





『(笑)・・・あぁ、わかった』





ボクに手を振りかけるリョウキの

その手には…

さっきアイルちゃんが渡した

ハンカチが握られていた





『・・・』





さすがの暑さに

ジャケットも脱いで

ネクタイもほどいたリョウキの姿



チラ・・・



横目で見るリョウキは

ハンカチを握りしめて

微笑みの中にも…なにかを

グッと堪えるような顔をしていた






『フフ…・・・ほんとのほんとに

わかんねーんだな・・・・アイツ』




寂しそうな笑顔で

ハンカチを見つめながら

ため息まじりにそれを確かめる





『・・・リョウキ』



『フフ・・・いや、なんでもない』





覚悟を決めても…その現実に

直面するのは辛いに決まっている



自分といた日々をすべて

忘れてしまった彼女




毎日、隣にいた女性(ひと)に

初めて会うかのように

その名を名乗ったリョウキ



自分の一番近くにいたパートナーに

そんな風に名乗ることは

どれ程の切なさだろう





不意にひとすじ流れていた涙は

その覚悟と切なさの塊だ




ボクには…そんな風に思えたんだ




ネクタイを外したリョウキの胸元から

わずかに見える革紐


ネックレス…?


ちがった





その先端には

∥行き先のない指輪∥が

結びつけてあって



キラキラと光るそれは

涙を堪える弟の代わりに

泣き続けているかのようだった。
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