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それでも僕は
第8章 8☆
「ううん、大丈夫…早く行こう」
俺はゆうから飲み物とポップコーンを受け取って映画館に向かう。席に座りキャメル味のポップコーンを食べる。少し甘すぎる気がするが滅多に口にしない味に新鮮味を感じる。ゆうが俺のキャメル味のポップコーンを物欲しそうに見ている。
「はい、ゆう…」
俺はゆうの口にポップコーンを近付ける…誰か見てないか不安だったが他の客と離れているから多分大丈夫だろう。ゆうは少し驚いたあと照れながらも口を開いた。甘いポップコーンを食べてわずかに口元が緩んだ。それを見た俺はゆうが本当は甘いもの好きなのだと確信した。
「もう少しで始まるね」
ゆうはスクリーンに視線を移す。俺は世情に疎いため見る映画はゆうに選んでもらった。ゆうは俺を支えようと背伸びしている。微笑ましいと思う一方、俺にもっと本当のゆうの姿を見せてほしい。でも今の頼りない俺ではその願いはただのわがままなんだろうな…。
「ちょっと良いかな?」
ゆうと一緒に映画館から出て繁華街を歩いていると高そうなスーツを着た男に声を掛けられる。男は値踏みするような目で俺とゆうを見る。
「どうかしましたか?」
ゆうは不躾な男の視線から俺を庇うように前に出る。
「僕はこういう者だけど、これからちょっと話せないかな?」
「すいません、このあと人と待ち合わせしているので」
男は俺とゆうに名刺を渡す。名刺には芸能プロダクションの名前があった。俺が驚いて目を瞠った。驚いている俺を余所にゆうは男の誘いをずけなく断る。前にもこんなことあったのか?と思うくらいゆうは落ち着いていた。ゆうは男を軽くあしらったあと俺の腕を引いて歩き出す。
「あ、あの…」
ゆうに腕を引かれたままゆうの家に連れ込まれる。急なゆうの変化に俺は戸惑う。
「ゆ、ゆう…?」
リビングに入るとゆうに抱き締める。不安そうな目で俺を見つめるゆう。いつもと比べものならないくらい強く抱き締められる。さすがに痛いが不安そうなゆうを前に痛いから離してと言えない。
「ケイ…」
「んっ…!!」
ゆうが俺にキスをする。ゆうは戸惑う俺の咥内に舌を挿れる。
「んっー!!んっー!!」
俺の足が宙に浮く。ゆうがこんなに乱暴にキスしてきたのは初めだ。