この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第11章 散る花
普段の私なら、すぐに怯えて目を逸らしビクビクとして逃げ出すだけなのに…。
「おばさん、たこ焼きを一つちょうだい。」
ノアが焼くたこ焼きを食べてみたくなる。
どうせ帰っても1人だから…。
夕食代わりのたこ焼きを買う事にする。
「はいよ。ノア君、サービスしてあげてね。」
おばさんの言葉に頷くノアが
「ソース?ポン酢?マヨネーズは?葱は?」
と私の好みを聞いて来る。
心地好く広がる声…。
「マヨソース…、葱たっぷりの青海苔無しでお願いします。」
注文をするとたこ焼きを入れるお皿にノアが手際良くたこ焼きを盛り付ける。
一人前は6個って決まってるのに8個を入れてくれる。
「ありがとう…。」
ノアからたこ焼きを受け取りおばさんにお金を払う。
たこ焼きの入った袋を自転車の籠に乗せお店を出ると
「ちょっと、ノア君、咲都子ちゃんを送ってあげて…。お店はもう閉めるし、片付けはおばさんがやっておくから…。」
とおばさんが言う。
「いいよ。おばさん…。1人で帰れるから…。」
「良くないの。夏休みになって、この辺もおかしな子達がウロウロとするようになったし…。」
今年は補導件数も倍になったとおばさんが嘆く。
「そりゃ、元々、良い街だとは胸を張っては言えないけど…、地元の人間は誰も悪い事なんかしやしないよ。この街で悪さをするのは必ず街の外から来る子だよ。」
私の事件を知ってるおばさんが心配してくれる。
夜の8時…。
あの街では一番活気が出る時間帯…。
街外れにある南斗の部屋に帰るのだから、そこまで危なくはないとはいえ、やはりあの街のお店が減ってからは人の目が足りなくなった街は危険と隣り合わせになってるとおばさんが言う。
ノアは黙ったままお店から出て来ると私の自転車のハンドルを握り私を送ると無言で示す。
信じられないほど目立つノアにエスコートされて古びた街を歩く私の足は宙を浮いてる気分になった。