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籠の中の天使
第11章 散る花
見慣れたおばさんの笑顔にホッとする。
「おじさんは?」
大きな男の人から視線を外せないまま聞く。
彼は私の視線など毛ほどにも感じないのか、黙々とたこ焼きを焼き続ける。
実際、商店街を歩く人のほとんどが彼に何らかの視線を浴びせてるから、それほどまで目立つ人からすれば他人の視線などいちいち気にしてはいられないのだろう。
とても強い人だ。
少し感心する私におばさんが
「咲都子ちゃん、ビックリさせちゃった?彼ねノア君っていうの。大学生なんだけど今だけのアルバイトに来て貰ってるの。おじさんがね…、持病の腰痛が悪化しちゃって…。」
と彼が居る説明をしてくれる。
「おじさん、大丈夫なの?」
「簡単な手術をしたから、もう大丈夫。でも、しばらくお店には立てないから困ってたの。たこ焼き屋なんか儲からない商売だからアルバイトを雇うと言っても時給が安いし…。」
一時的にお店を閉めるか迷ってた時、時折、買いに来るノアが手伝うと申し出てくれたのだとおばさんが嬉しそうに笑う。
「凄くいい子なの…、真面目に働くし…。」
おばさんの褒め言葉を照れ臭そうに受け止めて笑う彼の笑顔にドキドキする。
それは南斗への気持ちとは違うもの…。
テレビの中のアイドルや俳優から感じる独特のトキメキ…。
この世の中に、こんなにカッコいい人が古びた小さなたこ焼き屋さんでたこ焼きを焼いてるとか驚きにしかならない。
「ノア君、この子は咲都子ちゃん。うちのお店に自転車を置きに来る子だから覚えといてあげてね。」
おばさんが声を掛けると
「ういっす…。」
と返事が返って来て彼が私に視線を向ける。
彼の力強い視線から目が逸らせなくなる。