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籠の中の天使
第12章 明けない夜
「ここって…、デートする場所?」
私の馬鹿な質問に再びノアが吹き出して笑う。
「こんな場所でデートなんかするかよ。ここにはデート前の準備に来ただけ…。」
戸惑う私にそっとノアが手を差し出す。
まるで今から踊りましょうと王子様が手を差し出してるかのようにノアの動きは優雅だ。
車が停まったのは狭い駐車場…。
その上にコンクリートで出来た階段があり、ノアの手を取った私を連れてノアが階段をゆっくりと登る。
イメージはまさに舞踏会へ連れて行かれるお姫様気分…。
ドキドキしながら上がった階段の上には大きなガラス張りのショーウィンドウがあり、ガラスで出来た扉をノアが開ける。
目が痛くなるくらいの真っ白な壁と真っ白な床で出来た広いフロアへの真ん中へとノアと進む。
ここはブティックだ。
世間知らずの私でも知ってる有名ブランドの服や靴、バッグなどが芸術品のように展示されている。
「ノア…。」
足が竦む。
籠娘には相応しくないお店…。
「親父が出資してる店の一つだから気にすんな。」
尻込みをする私の背中をノアが押す。
店の奥から軽やかな足取りでお洒落な女の人が姿を見せる。
「誰かと思ったら玲夜君だ。」
綺麗な女の人がコロコロと笑う。
「市原 穂奈美(いちはら ほなみ)だっ!」
失礼だとか考える余裕すらなく叫んじゃう。
テレビで見る彼女よりも何倍も綺麗な女の人…。
ファッションコーディネーターとして女子高生やOLの憧れる女性No.1に輝き、テレビで大活躍中である市原さんが叫ぶ私を見て素敵な笑顔を浮かべる。
「随分と可愛らしい彼女を連れて来たって事は全身コーディネートって事かしら?」
意味深な言葉をノアに投げ掛ける市原さんは私を吟味するようにじっと眺めてる。
デートの準備…。
ノア好みの女の子に作り替えられるの?
慣れない高級ブティックで迷子の気分だというのに、心の何処かで私じゃない私に変われる期待に胸が膨らんでいた。