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籠の中の天使
第7章 知られたくない



険悪な状況の中で目の前が真っ暗になる。

私の足元にある地面だけが崩れた感覚がする。


「相原っ!」


南斗の声がしたような気がした。

誰かが崩れ落ちる私を抱き上げる。


「もう大丈夫…、大丈夫だからな。」


そんな声が耳元で聞こえる。

次に目を覚ますと私はバスの中に寝かされてた。


「起きたか?」


南斗の顔が私の顔の目の前にある。


「なん…。」


南斗の名前を出す前に南斗の人差し指が私の口を塞ぐ。

バスの運転手さんが運転席から私を見る。


「先生、大丈夫そうですか?」


と南斗に聞いてる。


「大丈夫そうです。すみません…。」


と南斗が答える。

今夜の私は南斗とバスで待つ形で野球観戦という団体行動に参加するはずだった。

バスにはテレビがあり、そのテレビには現在ドームで行われている試合が映ってる。


「ご飯、食べれそうか?」


南斗が私の為に買って来たお弁当を出す。

このバスで南斗とご飯を食べて過ごす予定だったが、札幌の市内見学に出た子の一人が捻挫をした為に南斗はその学生を連れて病院に行き私は予定外の行動をする事になってしまった。

しかも私が倒れたから、万が一の時はバスで病院に行かなければならない状況になりかねないからとバスの運転手さんにも心配を掛ける事になった。


「塚本先生には相原の予定を言ってあったのに…。」


大袈裟に南斗がため息を吐く。

夕方までに南斗が戻れない時は早月先生が私に付き添う予定になってる事を、ちゃんと言い残してたのに千紗先生は他の生徒の不平を聞くだけで精一杯だった。


「札幌見学が出来なかった学生さんだって?お土産にこれをあげる。他の学生さんには内緒だよ。」


お弁当を食べ終わった私にバスの運転手さんがデザートだと言って札幌で有名な生チョコレートのお店の小さな箱を渡してくれる。


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