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籠の中の天使
第7章 知られたくない



「ありがとうございます。」


親切な運転手さんには素直に笑える。


「うんうん、チョコレートが食べられるなら、このまま修学旅行は楽しめるね。せっかくの旅行なのに体調を崩して帰る事になったら大変だよ。」


毎年、札幌に向かってあちこちからやって来る学校の修学旅行を見て来たという運転手さんは途中で病気になって修学旅行を楽しめなくなる学生は可哀想だと言う。

運転手さんには悪いが私は修学旅行を楽しめなくなる事よりも、クラスメイトにビクビクと怯えて過ごす方が辛いとか考える。


「もう少し、寝てていいぞ。」


バスにあった毛布を南斗が私に掛けてくれる。

その毛布の下で南斗の手をギュッと握る。

南斗が一瞬、戸惑いを見せる。


「怖かった…。」


そう呟けば


「そうか…。」


と南斗が納得してくれる。

世界が怖い…。

あの街以外の人が怖い…。

怯える私の手を南斗が握り返して来る。

この手を離すのが一番怖いと思う夜だった。

試合が終わり、皆んながバスに帰って来る。


「ごめん…、相原…、大丈夫だったか?」


私を心配する峯岸君が言う。

岡村さん達は私の方を全く見ない。

茂君や向井さんが岡村さん達を睨んでる。

私が倒れたのは岡村さん達のせいだと誰もが思ってる。


「大丈夫…、ちょっと疲れただけだと思う。」


峯岸君を見ず、俯いたまま答える。


「本当にごめんな。」


いつまでも私に謝る峯岸君に千紗先生が


「ほら、委員長も自分の席に座って…。」


と急かす。

帰りのバスは千紗先生が私の隣に座る。

南斗は違うバスに乗る。

そっちには捻挫したという学生が居るから…。

私にだけ構ってる訳にいかない。


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