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籠の中の天使
第7章 知られたくない
流石に、こういう学生に慣れているのかバスガイドさんも負けてない。
「そう、今日は世界史しか知らない学生さんばかりなのね?なら皆さんの為に今日は張り切って五稜郭の歴史を丁寧に隅々まで説明させて頂きます。」
といつもよりもたっぷりと歴史を聞かせてやると意気込む。
「達也…、余計な事言うな。」
「ばーか…。」
口々に達也君が責められる中でバスガイドさんはマイペースなまま五稜郭に纏わる歴史の解説をする。
「1866年に完成した五稜郭ですが…。」
ガイドさんの言葉が耳をすり抜ける中、私達を乗せたバスは五稜郭へと向かう。
ガイドされる歴史に興味の無い人達は
「五稜郭って夕べ展望台から見えてた星型のやつ?あれって結構広くなかった?」
「夜景だと綺麗だったけどわざわざ歩き回ってまで観たいとは思わないよね。」
と騒いでる。
夜景で有名な函館…。
皆んなは昨日のうちに有名な赤レンガ倉庫や夜景スポットに行ってるから今日の観光は眠いだけの観光になるみたいだけども私だけが北海道での初めての観光だから少しワクワクする。
五稜郭を観たら、少しは北海道に来ましたって気分になれるかな?
そんな期待はあっさりと裏切られる。
「五稜郭って高いところから見るのが一番いいらしいよ。」
真っ先に向井さんが五稜郭タワーへ茂君と向かう。
向井さんの言う通り、下で観光する五稜郭って、ただのだだっ広いだけの公園って感じしかしない。
「俺らもタワーに行く?」
峯岸君が聞いて来る。
私は首を横に振る。
私の目の前を捻挫した子の車椅子を押した南斗が横切ったから…。
僅かでもいいから南斗と一緒に五稜郭を歩きたい。
なのに南斗は捻挫した子の友達だと思われる女の子達に囲まれてて私には気付かない。