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嘘の数だけ素顔のままで
第4章 去勢【3】

「すみません……小さい、ゆ、の打ち方がわからなくて」とヒタチノゾミは言った。
『先生』は背もたれに手を付いたまま前屈みになって、ヒタチノゾミに顔を寄せた。ヒタチノゾミは『先生』の話すことに何度もうなずいていた。
『先生』の声は小声でよくは聞き取れなかったが、だったらおれに聞けばいいじゃん、ということだけははっきりと聞こえた。
なぜタメ口なんだろう、コトブキはそう思った。ヒタチノゾミはうなずく度に、すみません、と謝っていた。
コトブキが二人の様子を見ていることに『先生』が気づいた。次の瞬間、舌打ちのようなものが『先生』から聞こえた気がしたが、今のがヒタチノゾミに対してなのか、それともコトブキに向かってやったのかわからなかった。
「あ、コトブキさん、もういっすよ」と『先生』は言った。
パソコン初心者のヒタチノゾミに『先生』が付きっきりになるのはめずらしいことではなかったが、コトブキはおもしろくなかった。
「あ、そうだ、コトブキさん、誰かにメール出してみてくださいね」と『先生』が言った。
コトブキは心の中の声が聞こえてしまったのではないかと思って返事に焦った。だが『先生』は気にする様子もなくて、皆さんもクラスの誰かにメール出してみてくださいねー、と大声で言った。教室の緊張が少しだけ緩んだ。
『先生』は背もたれに手を付いたまま前屈みになって、ヒタチノゾミに顔を寄せた。ヒタチノゾミは『先生』の話すことに何度もうなずいていた。
『先生』の声は小声でよくは聞き取れなかったが、だったらおれに聞けばいいじゃん、ということだけははっきりと聞こえた。
なぜタメ口なんだろう、コトブキはそう思った。ヒタチノゾミはうなずく度に、すみません、と謝っていた。
コトブキが二人の様子を見ていることに『先生』が気づいた。次の瞬間、舌打ちのようなものが『先生』から聞こえた気がしたが、今のがヒタチノゾミに対してなのか、それともコトブキに向かってやったのかわからなかった。
「あ、コトブキさん、もういっすよ」と『先生』は言った。
パソコン初心者のヒタチノゾミに『先生』が付きっきりになるのはめずらしいことではなかったが、コトブキはおもしろくなかった。
「あ、そうだ、コトブキさん、誰かにメール出してみてくださいね」と『先生』が言った。
コトブキは心の中の声が聞こえてしまったのではないかと思って返事に焦った。だが『先生』は気にする様子もなくて、皆さんもクラスの誰かにメール出してみてくださいねー、と大声で言った。教室の緊張が少しだけ緩んだ。

