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嘘の数だけ素顔のままで
第2章 去勢【1】

クラスメイトは全部で十三人、汗臭いオヤジの職場から一変して男はコトブキ一人だけだった。しかも県内ニュースにもなった某老舗デパートを解雇された従業員が五、六人いた。
勤続年数十年以上というから彼女たちの結束は固かった。一度口を開くと拡声器のように喋りまくるのでこのグループがすべての中心になった。
昼飯は会議用のテーブルをふたつ並べて皆で食べる。どうせ男が自分しかいないのだからコトブキは一人で食べたかったが、女特有のおせっかいがそれを許さなかった。
別に孤独が好きな訳じゃなかった。他人から見ればつまらない理由でもコトブキにすれば切実な問題があった。
しかも元の建物がコンビニだからひどく狭いうえに、机を並べた場所がウォークインケースのせいか薄暗くてカビ臭くてジメっとしていた。
女たちは一応に弁当を机に置くと、トイレに行くことを宣誓し、じゃあ、次はあたしねー、といった具合で賑やかになった。
トイレは元々コンビニにあったのは撤去されていて、雑誌を並べる窓側と反対の場所に新設されていた。その隣には簡易的な給湯器が設置されている。
「コトブキくん、からだでかいんだから先行って」
「その言い方、って、あたしも人のこと言えないんだけどねー」
オオハナタカコはそう言ったあと、コトブキに向かってパタパタと手を動かした。早く行って貰っていい? ということらしい。
「ちょっとお待ち」オオハナタカコは、コトブキが恐縮しながら行こうとするのを今度は呼び止めた。「んもう、だらしないなあ」
そして、コトブキのウエストから食み出しているシャツを直してくれた。やさしー、そう女たちに茶化されたオオハナタカコだったが、どもりつつ礼を言うコトブキに再びパタパタと手を動かした。
コトブキアキラは、年中寝ぐせをつけているような男だった。
勤続年数十年以上というから彼女たちの結束は固かった。一度口を開くと拡声器のように喋りまくるのでこのグループがすべての中心になった。
昼飯は会議用のテーブルをふたつ並べて皆で食べる。どうせ男が自分しかいないのだからコトブキは一人で食べたかったが、女特有のおせっかいがそれを許さなかった。
別に孤独が好きな訳じゃなかった。他人から見ればつまらない理由でもコトブキにすれば切実な問題があった。
しかも元の建物がコンビニだからひどく狭いうえに、机を並べた場所がウォークインケースのせいか薄暗くてカビ臭くてジメっとしていた。
女たちは一応に弁当を机に置くと、トイレに行くことを宣誓し、じゃあ、次はあたしねー、といった具合で賑やかになった。
トイレは元々コンビニにあったのは撤去されていて、雑誌を並べる窓側と反対の場所に新設されていた。その隣には簡易的な給湯器が設置されている。
「コトブキくん、からだでかいんだから先行って」
「その言い方、って、あたしも人のこと言えないんだけどねー」
オオハナタカコはそう言ったあと、コトブキに向かってパタパタと手を動かした。早く行って貰っていい? ということらしい。
「ちょっとお待ち」オオハナタカコは、コトブキが恐縮しながら行こうとするのを今度は呼び止めた。「んもう、だらしないなあ」
そして、コトブキのウエストから食み出しているシャツを直してくれた。やさしー、そう女たちに茶化されたオオハナタカコだったが、どもりつつ礼を言うコトブキに再びパタパタと手を動かした。
コトブキアキラは、年中寝ぐせをつけているような男だった。

