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嘘の数だけ素顔のままで
第2章 去勢【1】

女たちに急かされつつ、コトブキはいつもの席に坐った。有難くないことに壁際の上座が与えられていた。
一番先に坐らされたコトブキだったが、女たち全員が着席するまで待った。初日に抜け駆けするように食べ始め、大、大、大ヒンシュクを買った為だった。
女たちの中には、マグカップに紅茶を淹れる者やインスタントの味噌汁をつくる者、特に性が悪いのがスマホをいじる女で、毎回十分は待たされた。さあ、たべよ、とクラスで一番声のとおる女の合図でようやく弁当を開けることができた。
上座から眺める女十二人は濃艶な風景だった。中世の王様気分といっていい。ただし、女どもが黙っていてくれればの話だが。
「わお、お弁当すごーい」一番声のとおる女というのがコトブキのすぐ斜め右向かいにいて、伝言ゲームのように下々まで話が伝わっていくのがデフォだった。「おかあさんがつくったんですかー?」
すごくない? と女たちが次々に腰を浮かせてコトブキの弁当を見てきた。
「海苔巻き一個ちょうだい」
一番声のとおる女がそう言えば、あたしもほしー、と次から次にせがまれて、プラスチック皿を用意していた女の手によって手際よく海苔巻きが下々まで配られていった。
「これは何ですかー?」と、一番声のとおる女がまた訊いてきた。
わらびの一本漬けです、
「わらびって春じゃないの」
コトブキから向かってすぐ左側にいるオオハナタカコがそう言った。
冷凍だと思います、
「貰っていい?」オオハナタカコはそう言って、箸をつけた。「どうやってつくるんだろ」
オオハナタカコが、うん、おいしー、とうなずいている間に、海苔巻きのお返しがプラスチック皿に載ってコトブキの元に運ばれてきた。そのお礼をコトブキが言い終わらないうちに次の質問が飛んだ。
一番先に坐らされたコトブキだったが、女たち全員が着席するまで待った。初日に抜け駆けするように食べ始め、大、大、大ヒンシュクを買った為だった。
女たちの中には、マグカップに紅茶を淹れる者やインスタントの味噌汁をつくる者、特に性が悪いのがスマホをいじる女で、毎回十分は待たされた。さあ、たべよ、とクラスで一番声のとおる女の合図でようやく弁当を開けることができた。
上座から眺める女十二人は濃艶な風景だった。中世の王様気分といっていい。ただし、女どもが黙っていてくれればの話だが。
「わお、お弁当すごーい」一番声のとおる女というのがコトブキのすぐ斜め右向かいにいて、伝言ゲームのように下々まで話が伝わっていくのがデフォだった。「おかあさんがつくったんですかー?」
すごくない? と女たちが次々に腰を浮かせてコトブキの弁当を見てきた。
「海苔巻き一個ちょうだい」
一番声のとおる女がそう言えば、あたしもほしー、と次から次にせがまれて、プラスチック皿を用意していた女の手によって手際よく海苔巻きが下々まで配られていった。
「これは何ですかー?」と、一番声のとおる女がまた訊いてきた。
わらびの一本漬けです、
「わらびって春じゃないの」
コトブキから向かってすぐ左側にいるオオハナタカコがそう言った。
冷凍だと思います、
「貰っていい?」オオハナタカコはそう言って、箸をつけた。「どうやってつくるんだろ」
オオハナタカコが、うん、おいしー、とうなずいている間に、海苔巻きのお返しがプラスチック皿に載ってコトブキの元に運ばれてきた。そのお礼をコトブキが言い終わらないうちに次の質問が飛んだ。

