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嘘の数だけ素顔のままで
第10章 孤立【2】

土日は職業訓練が休みだった。休みの日にコトブキが両親と一緒に朝食をとったのは数年ぶりのことだったかもしれない。八時半に着替えて家を出ようとすると、あら、きょうは休みよね? と母親が言った。庭仕事をしていた父親も同じことを言った。
図書館で勉強するんだ、
コトブキはそう言って車に乗った。
茂木楽器店・駐車場には土曜だというのに車は一台も停まっていなかった。エレベーターの数字の入っていないあのボタンを押しても動かない。二階のピアノ教室や三階のヨガ教室には行くことができた。しかし、何度数字のない四角いボタンを押してもエレベーターは動かなかった。
茂木楽器店に客は相変わらず一人もいなかった。
営業中ですか?
タトゥーだらけのあの店員にそう訊いてみた。この男に秘密クラブのことを尋ねる訳にはいかない。それとなく訊くしか方法がない。雑居ビル自体が謎だらけだった。
店員は、ああ、とだけ言った。
図書館で勉強するんだ、
コトブキはそう言って車に乗った。
茂木楽器店・駐車場には土曜だというのに車は一台も停まっていなかった。エレベーターの数字の入っていないあのボタンを押しても動かない。二階のピアノ教室や三階のヨガ教室には行くことができた。しかし、何度数字のない四角いボタンを押してもエレベーターは動かなかった。
茂木楽器店に客は相変わらず一人もいなかった。
営業中ですか?
タトゥーだらけのあの店員にそう訊いてみた。この男に秘密クラブのことを尋ねる訳にはいかない。それとなく訊くしか方法がない。雑居ビル自体が謎だらけだった。
店員は、ああ、とだけ言った。

