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マスタード
第4章 運命の出会い
そう思って店に行く決心をした。
それに愛美の自家製だという甘くて辛いマスタードマヨネーズは実に奏の心に染みる忘れられない味だ。

店に入ると、「いらっしゃいまし~・・あっ、そうちゃんだ」と陽葵が嬉しそうに迎えてくれた。

吹奏楽部の練習をした帰りでもう20時半ぐらいだったので最後の客が精算をして帰るところだった。
そういえばこの店は21時には閉まるんだったなと思い出した。『愛』のように21時から始まる店もあるのにと思うとちょっと面白くもあった。

「あっ、奏ちゃん」と愛美は嬉しそうに出迎えてくれたが、ちょっと怒っているように「もう、遅いよ」と言った。陽葵も「おそいよ」とそれに続いた。

「ごめん、店は21時までだったね。また出直そうか」と言うと、

「そうじゃなくて・・まあ、そういう奏ちゃんらしいところも好きなんだけどね」と愛美は大笑いした。

「ちょっと早いけど店閉めちゃうね。奏ちゃんはゆっくりしてってよ」と愛美は提灯を消してシャッターを降ろしてとテキパキと閉店準備をした。

「もう、もっと早く来てくれなきゃダメでしょ。なかなか来てくれないから嫌われちゃったと思ったよ」と愛美は少し拗ねたように言った。

全くその逆で愛美を好きになってしまうのが恐くて悶々としていたなんてとても言えないから、「ごめんね、忙しくて」とお茶を濁した。

「それじゃあ先に帰るわね」

あの還暦の男の人は言っていたとおり先月で辞めたので愛美の友達が手伝いに来ているようだ。店が終わったので手早く帰り支度を整えていた。

「よかったじゃん、彼がうわさの奏ちゃん・・邪魔者は帰りますから、ごゆっくり~www.」

友達は愛美に小声で言ってクスクスと笑って帰って行った。
うわさのって・・愛美は奏のことをよく話していたらしいことが分かって何だか照れてしまう。

「もう、貴美ちゃんってば何言ってるのかね、きゃはは」と愛美も照れて笑った。

その照れた笑顔がとても可愛いと奏はドキドキした。

「帰ってくるのはいつもこんな時間?」

「うん。部活とかやってるとどうしてもこんな時間になっちゃうんだ。遅くにごめんね」

「いいのよ、一応21時までだけど長くやる時もあるし・・奏ちゃん来る時はLINEしてよ。店閉めても裏口から入ってくれればいいから」

愛美の提案でLINEを交換して電話番号も教え合ってしまった。

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