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マスタード
第4章 運命の出会い
陽葵を返して愛美と別れると奏はとぼとぼと歩き出した。もうキスのことしか頭になくて、まるで浮かんでいるように地面の実感もなくふわふわと歩く。

今キスをして別れたばかりなのにもう愛美が恋しくなって後ろを振り返る。当然ながら家に入ったから愛美や陽葵の姿はもうなかった。
この時に愛美の家が海沿いにあることに改めて気づいた。この海沿いの道をずっと行くとリサと歩いて初めてキスをした場所がある。
何か運命的なキセキを感じた。

宿舎に帰って風呂に入って寝支度を整えてもまだ体が火照って熱い。アルコールや山道や風呂のせいではない。愛美とのキス、そして抱擁の感じがまだ残っていて奏の体を熱くしている。

男の部分は痛いぐらいに大きくなっている。これが愛美を抱きしめた時に当たってしまったとはと少し情けなくなる。
愛美と恋をすることも躊躇っていたのに、こんなにも愛美が欲しくなるとは思わなかった。

体を求めて彼女に惹かれたワケではない。可愛い子供がいて仲のいいパパとママ、そんな幸せな関係が欲しいのに、こんな始末ではまるで体を求めているみたいじゃないかと痛くなっているモノを憎らしくさえ思った。

40歳を過ぎれば衰えると思っていたのに、こんなにも恋人との関係を求めてしまうとは、若い頃と何も変わらないじゃないか。
いや、リサと逢えなくなってから活動を休止していた男の火山が愛美との出逢いで再び活性化したようにも思える。

「愛美、愛美~っ」

布団に入って愛美とのキスや抱擁の感触を確かめていたのだが、やがてガマンができなくなって、抱擁した時に触れた胸の感触に刺激されて火山は噴火した。

「はあはあ、ああっ、愛美・・」

愛美をこんなことに使ってしまった。
噴火してから落ち着きを取り戻すと愛美に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、激しい罪悪感に襲われた。

少年の頃、クラスの女子や憧れの女性の先生を想って噴火して激しい罪悪感に襲われたことを思い出した。
歳を重ねても全く成長も落ち着きもなく変われない男は愚かだとつくづく思った。

その頃愛美も布団の中にいた。
陽葵をお風呂に入れたり歯を磨いたりしてちゃんと寝かしつけて布団に入ると奏とのキスや抱擁を思い出して火照ってしまっている。

2回も失敗して、もう男なんて要らないと思っていたのに、奏が現れたりするから眠っていた女がまた目覚めてしまった。

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