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blossom
第14章 Love13:待つ男
あの夢のような至福の時間は、私にとって人生で一、二を争う大きな出来事だった。

(死ぬときに見る走馬燈にも出てくるかもね)

Honeysへの自転車を漕ぎながら、今際のきわにあの場面を思い出してるおばあちゃんの自分を思い浮かべて笑ってしまった。


いつもどおり、モーニング帯の常連さんとの和やかな朝だった。変わっていたのは、いつも佐野くんがキッチンにいる曜日なのに、今日は入っていなかったことくらい。
でも、そこに違和感を感じられるほどに、その時の私は地に足が着いていなかった。


Honeysの帰り、卵と牛乳だけをスーパーで買い足してから家へと向かう。近所の大きな公園の中を通るのがいつものルートだった。

公園の中、大きな音を立ててブレーキをかけた。佐野くんがいたからだ。

「桂木さん!」
目が…怖い…

私の知っている佐野くんじゃないみたいだった。

「どっ、どうしたの…こんなところで…」

「話したくて待ってました」

「ここ、近所だから、人に見られたら困る…」

「少しだけでいいから…」
近づいてくる佐野くんの目は、大きく見開かれていて瞬きもしていないように見える。

「本当にお願い、困るの」

避けて行こうとすると、腕を掴まれてしまった。ギリギリと締め上げるように掴まれて、 思わず声を上げた。
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