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スカーレットオーク3
第5章 5 沢田雅人
 ペンションの周りをのんびり散歩して紅葉したスカーレットオークを眺める。

真っ赤なギザギザした長細い葉が、他の木々の葉と違った個性的な様子で静かに存在感を主張している。(綺麗だな)



 沢田は陶芸教室のアトリエの方を向き、窓からそっと中を覗き見た。

緋紗がロクロを回している。

女性の割にごつごつした手が粘土を、一定の速度で滑らかに螺旋状に引き上げる。

そしてまた下げる。

沢田はため息をつきながら(綺麗だ)と心の中で呟いた。





 沢田雅人は作業療法士で病院勤務だ。

色々な症状の様々な年代の男女のリハビリを行っている。

特に手を使うこと、日常生活への復帰に向けてサポートすることが多い。

初めて緋紗のロクロを回す姿を見たときには、無理や無駄のない自然な指先の動きが、自分の仕事に使えそうな作業だと思い関心をもってみた。

そのうちに緋紗の指先の力強いしなやかさ、更には粘土に向かう集中力や真剣さに目を奪われ始めていて、気が付くと沢田は緋紗に恋をしていた。



 もう緋紗と知り合って十二年になり親しくもなっているが、気持ちを告げることはなかった。

告白したくならない訳ではないが、緋紗を困らせるだけなのはわかっていたし、緋紗の夫、直樹の存在が大きすぎた。
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