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好きと依存は紙一重
第4章 一難去ってまた一難
 強姦未遂、および放火未遂事件から2ヶ月後、未亜はフロイデで軽快にキーボードを叩いている。今書いているのは、次の演劇の台本だ。
 タイトルは”道化師の夢”。城で働く女中には、小さな息子がいる。その息子は王子と女中の間にできた子供だが、都合が悪いと思った王子は女中と息子を追い出してしまう。女中はすぐに別の屋敷で働こうとするが、王子が「この女中は自分の子供を私との子だという妄想に取り憑かれている」とデマを流したせいで、どこの屋敷も雇ってくれない。
 兄の伝でなんとか住処と仕事を得た女中だが、家は風が吹けばガタガタ揺れ、雨が降ったら雨漏りがするひどい家だった。仕事も重労働な割には賃金が安く、なんとか食いつないでいくだけで精一杯だ。

 2年も経つと女中は過労死してしまい、息子は孤児院で暮らすことになった。孤児院で暮らしながら、王子に復讐すると誓う息子。彼は大きくなると宮廷道化師になり、住み込みで城で働くことになった。
 最初は国王となった彼を暗殺しようとしていた道化師だが、彼の娘である美しい王女を見て、彼女を殺めてしまおうと考える。殺意を隠して王女に近づくも、彼女の優しさに殺意が溶かされ、彼女に好意を抱いてしまう。
 王女もまた、道化師を心から愛してしまう。それを知った道化師は、復讐と愛の狭間で苦しむことになる。

「うーん、ラストはどうしようかな……」
 いくつか案は浮かんでいるものの、どれにしようか決めかねる。王女を殺すことにしても、国王の前で殺すか、誰もいないところでひっそり殺すかで迷ってしまい、ひっそり殺すにしても遺体を隠すか、分かりやすいところに置くかで迷ってしまう。
「おっと、筆が止まったか? 大先生」
 日向がニヤニヤしながらバニラアイスを出すと、真理亜が咳払いをする。
「オーナー、シャム猫さんの邪魔しちゃダメでしょ」
「はいよ」
 日向は適当に返事をすると、未亜を茶化すのをやめた。
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