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楽しい田舎暮らし
第1章 初めての田舎暮らし
俺がこのド田舎伊佐奈村に越してきて半年が過ぎた。この伊佐奈村がどれだけ田舎かは裏山の山頂にある展望台から見下ろせば一発でわかる。見えるのは田圃、田圃、田圃、たまに畑。百戸弱の民家がポツンポツンと点在しスーパー、コンビニは当然無く、在るのは婆様が意地と趣味でやってる雑貨屋だけ。野菜はその雑貨屋の隣に在る直売所へ農協に規格外で弾かれた物や趣味で作った物が小遣いになればと並ぶのでそれを買うか自分で作って食べる。流石に肉魚はそうはいかないので車で片道一時間以上かけて町迄買い出しに行かねばならない。
 公共施設といえば村役場と駐在所、それから小学校だけ。郵便局すら3年前に廃止になったそうだ。
 さて東京で小さいながらも業績の良かった企業に勤めていた俺の元を弁護士を名乗る男が訪ねて来たのが去年の今頃だったか。見るからに真面目そうな50代の男だった。用件は父方の祖父が死んだので遺産相続をとの事だった。俺は腹の中で臭く成るまで眉に唾を塗った。生まれてこのかた24年。祖父の存在など聞いたことがない。両親は二年前に交通事故で他界したので確認の仕様がない。どうも両親は駆け落ち者だったらしく父も母も実家からは各々勘当されてたらしく話題にすらならなかったのだ。絶対に詐欺だと思ったので話を聞いた翌日社長に相談したところ会社の顧問弁護士を通して調べてくれる事になった。
 結果は白。相続税払っても人生二回左団扇で過ごせるだけの資産が手に入るそうだが相続条件として伊佐奈村に住む事とあったので社を辞め引っ越して来たのだ。最寄り駅からタクシーに乗って村に着くまでまあ、心細かったこと。徐々にコンクリート、アスファルトがなくなり細い砂利道を右手に森(!)左手に崖(!!)を見ながら進むこと約一時間。やっと開けた所に出たら今度は田圃だらけ。大金の為とはいえとんでもないド田舎に来たものだと溜め息をついていると漸く新居に到着した。
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