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わたしを見ないで
第4章 指名返し
 精算時に手渡された給料は予想より3千円多かった。オプションがついたからだろう。
 その3千円はタクシー代に消えた。
 


 オートロックのワンルーム。
 引っ越してきてまだ4日目。
 電気を点けたら、殺風景な室内がパッと目に飛び込んできた。
 床の上にドサッとバッグを落とすように置いて、ベッドに倒れ込む。
 身体は何度もシャワーを浴びたから汚れていない。
 でも髪は出勤前に洗ったきりだからベタつきを感じる。それに客の煙草の匂いが染み付いてる。
 髪を洗わなきゃと思うのに身体が動かない。
 とにかく疲れた。


 ふと思い立って起き上がり、手を伸ばしてバッグを手元に引き寄せる。
 中をガサゴソして封筒を取り出した。
 もう一度中身を確認する。
 …よかった、間違いなく入ってる。

 明日出勤前に貯金口座に入れよう。
 1万円手元に残せば十分なはずだ。
 
 明日も予約が詰まってる。
 明後日も…
 その次も埋まるといいな。

 もう一度バッグに手を伸ばす。横着して寝そべったままだから今度は時間が掛かった。

 ようやくスマホを取り出して通知を確認すると、嫌な奴からLINEが入っていた。



 
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