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体育倉庫のハイエナ
第29章 29
 然る間に、そんなマモルの恩着せがましい態度を引き継いで、マサムネが奈津子に声をかけた。

「お前、マジで今日ウチに帰ったら日記に書いとけよ…『七月六日、晴れ。今日は四人の優しいセンパイに、イヤらしい体をいっぱい可愛がってもらいました。とっても嬉しかったです』って……何なら絵日記にして、俺たちのチ×ポの絵もしっかり書いとけ!」

 マサムネはそこで奈津子の返答を求めるべく、僅かに尻を浮かせた――奈津子の声から“くぐもり”が抜けて、純然たる嬉々とした喘ぎが、周囲に漏れる。

「アウン、あふぅん!はぁん、はぁぁん、ハァァァン、あぁんっ!――あッあッあッ、あぁん!んん、あぁっん、アゥアウゥンッ!――ハウゥン!はうッ!」

 その純然たる嬌声の合間に、奈津子は先程のマサムネの冗談のような指示に、真摯に答えた。

「あはぁん!――は、はい…――んんふぅん、ウゥン――か、書きます、日記…――あんッ!」

 この時、ほんの一瞬だけ、僕には奈津子の表情が垣間見えた――けど、信じられないことに、奈津子は笑っていた。

 奈津子は他の四人と一緒になって、笑っていたのだ。
 
 その笑みは、今まさに奈津子の体を啄んでいる、獣のような四人の男達が浮かべている笑みと、その品の無さにおいては、何ら変わらなかった。

 まるで腹を空かせた野良犬が、長く彷徨ってようやく餌にあり付いた際に漂わせるような、下品な笑みだった。

 そこには少なくとも今日、最初にここにやってきた時には持ち合わせていた、子供のように無邪気な質は、まるでなかった。

 きっと奈津子はもうその自尊心も、この男達に抗う気力も失ってしまったのだ。

 そして奈津子は、狂ってしまったんだ――僕はそう思った。

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