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イキ狂う敏腕社長秘書
第10章 【溺れていく本能】





半天を羽織り笑顔で振り向いた。
そろそろ行かなきゃ。
このだだっ広い部屋にあなたを1人にしてしまうのが少し胸が痛むけど。




「ごめんね…?まだ明里さんにも出さなきゃいけないから…」




ズキッとした。
正直に言ってくれる優しさは時に刃になる。




わかってる……わかってたよ。
明里さんに出すってことはまだセックスする仲だってこと。
そうだよね、明里さん妊娠させる訳にはいかないもんね。




「ごめん、一番嫌なこと言った」




今私が居るのはマコさんの腕の中なのに。
私が見てるのは幻なのかなぁ。
一番近いようで一番遠い。
でも泣かない。
こんな事で挫けちゃ半歩すら進めない。




「マコさんは悪くないです……私も同じような事マコさんにしてる……私こそごめんなさい」




抱き締めながら首を振ってくれた。




「私が愛してるのは美雨だけだよ」




その一言で真っ黒だった心が浄化されていく。
縛りが解ける。
呼吸が出来るようになる。




「私もマコさんだけを愛してます」




この口づけだけは嘘偽りのないモノにしたい。




「本当にもう、行かなきゃ」




最後に…と私からもう一度キスをした。
これから彼氏の元へ帰る。
大好きなあなたを残して。




「来てくれてありがとうございました……嬉しかったです」




とびきりの笑顔で終われるように。
背を向けて引き戸に手を掛けた。
バンッ!て音と共に扉は閉められ再び後ろからハグしてくるマコさん。




え…?と見上げるとそこには今にも泣きそうな顔。
待って………そんな顔されたらこっちもつられちゃう。




「マコさん…?」





「明日何時に帰る?」




「えっと………夜の9時頃には家に着くと思います」




「じゃ、家に行って良い?」




びっくりして振り向いた。
言葉にならずうんうん…と頷く私にフッと優しい笑顔。
前髪や頬に触れてきて
「ごめん、ちょっと余裕ない」って唇を重ねてくる。




「抱き足りない……」




そんなの……私だって。
だから来てくれると聞いて泣き出しそうだよ。
顔が近いけどもっと余裕ないマコさん見ていたい。










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