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夏の終わりに
第23章 繋がる想い ③
ザック…ザク…ザック……ッ

農具庫に足を踏み入れようとした時、アマガエルの合唱に混じって、土をこするざらついた音が耳元を掠めた。

浩人はぎくりとして辺りを見渡した。
誰かが近づいてきていると思ったのだ。

しかし、辺りに人の姿はない。
音もそれ以上近づいてくることはなく、かと言って遠ざかる気配もなかった。

ザク…ッ…ザック……

少し離れた暗がりの中からそれは響き、時折、不規則な葉擦れの音が混じる。

浩人が目を凝らして音の出所を探していると、不意に畑の中から見覚えのあるシルエットが現れた。
昨夜、千里が襲われたその場所で、その影は大きく伸びをして腰に手を当てる。

「カズ兄…?」

小さい声だったが、聞えていたらしい。
人の形をしたそれが、ゆっくりと片手を上げる。

浩人が畑へ駆け寄ると、カズは汚れた袖で汗を拭っているところだった。
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