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BeLoved.
第28章 【カレハミエナイヒト。】

「はあぁ?!オイ真似すんなよヘタ麗」
「…テメーこそ何してんだボンクラ!」

頭の上で怒声が交差する。彼らもまさか相手が同時に自分と同じ事をするとは思わなかったようだ…

そのまま言い合いに発展してしまった彼らをよそに、わたしの心臓は痛いほど高鳴っていた。

『同時に』触れられたのは初めてだったから。

勿論どちらもあたたかかった。優しかった。
そして…心地よかった。愛情が籠っていて。

頬を両手で押さえ、呼吸を整えようと努めたけど…うまくいかない。
どうしよう。変なことばかり考えてしまう。

──もっと触れられたらどうなるの?
優しい手で、唇で。同時に同じように。
わたしの肌という肌に、触れられたら。

「俺は未結がなんか元気ねーから、回復させよーと」
「俺 の 日だよ。要らねぇことすんな」

その声と声で名前を呼ばれたら。
〰〰だめだ。あらぬ想像が止まらない。

『彼』を受け入れたその瞬間に
『彼』にも抱きすくめられたら

わたしはどうなっちゃうんだろう…


『3人でする趣味ねーのよ』
『未結は俺のものだからね』

思い起こされるのは彼らの言葉と眼差し。
─それでもわたしが『それ』を求めたら
優しい彼らは応えてくれるのだろうか?


〰〰何考えてるの!我に帰り、あらぬ想像を打ち消した。


「大体テメーは俺の神データ消しやがった時も」
「うーわ麗くんちっせー!それ小4ん時の話だろ」

生きている人間が一番怖い
彼らにはわたしが一番怖い

わたしにとっても一番怖いのは彼らだった。
怒らせたらどうしよう。機嫌を損ねたらどうしよう。
そんな事ばかり考えていた。でも今は違う。

今一番怖いのは、ほんの数ヵ月前とは
全く変わってしまった『わたし自身』だ

「まヘタ麗気にすんなよ。俺もう気にしてねーし」
「テメーはまず"ごめんなさい"を覚えろボンクラ」

2人の世界に入り込んでいる彼らに今のわたしは見えていない。姿はもちろん、胸のうちも。


──『彼』も『彼』も、わたしの──

………。


「──未結?」


…それでいいんだ。このまま黙っていよう。

「…そろそろ、中入りましょうっ」

彼らの服の裾をそっと掴み笑顔で見上げた。

おばけを見た時と一緒。黙っていればいい。
それならわたしの心中は彼らには見えない。


…ずっとこのままで、いられるんだから。
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