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BeLoved.
第31章 【番外編/彼は彼らしく。】
「ケーキは焼きますね!」
さて。いくらパーティーもおでかけもしなくて良いとは言われても、これだけは外せない!
今の時期だとやっぱり桃のケーキかな。さくらんぼを使ったタルトもいいな。あ、甘さ控えめのガトーショコラもいいかも。
「いらねーよ」
「……」
どれがお好みですか。それすら聞かせてくれない即断。高揚した気分にヒビが入った。
「…おっ、お嫌いですか?ケーキ…」
「違う。"手作りの菓子"が苦手なの」
…初耳だった。流星さまは頭を掻きながら理由を教えてくれる。
「中2のバレンタイン時さ、俺他校の女子からチョコもらったのよ。手作りのやつ。でね、帰ってそれ食ったらまー吐くわ下すわ止まんねーの。地獄みたわ」
それが結構なトラウマになっている。だから手作りの菓子は今も食べられない。
だから手作りはしなくていいし、そもそも甘いものを好まないのでケーキ自体いらない。
…もういいです…。
立て続けの拒絶に、わたしの心が先に折れた。
「あぁ、あったな。バイオテ口かまされたの」
横から入る麗さまの声。バ、バイオテ口…
「おい流星お前、その女子に何したんだよ」
「何もしてねーって。初対面だよ!時期的にノロだろ」
「てかよくそんな相手から渡されたもん食えんな。信じらんねぇ。さすがボンクラ」
「俺お前と違って素直だからね。ひねく麗ー」
素直…うん、確かにそうよね。彼は好きなものは好きだと言えるし、嫌いなものは嫌いだと言える。いつでも自分を貫く強さを持つ人なのだ。いろんな意味で。
「あーでもさ」
ふいに流星さまがこちらを向いた。
鋭い眼差しに一瞬心臓が跳ねる。
「未結がケーキになったら食えるかも」
素肌にクリーム塗ってフルーツで飾り付けして。
『召し上がれ』なんて台詞を口にした位にして。
「…だからお前はバカだって言われるんだよ」
「いーやコレすげーいい案じゃね?さすが俺」
自分の世界で生きる彼は迷言が多い。
正直、戸惑うことの方が多いけど…でもそれがまた楽しかったりするんだよね。
「どっちみち今日は俺の日だからね」
「一日位譲れよなー麗。小っせーな」
流星さま、お誕生日おめでとうございます。
これからも貴方は貴方らしくいて下さいね。
「テメーはテメーらしくテメーでコイてろ」