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BeLoved.
第5章 【Rで始まるやつ】
嘘のようだけど本当に始まった、新生活。
まともな恋愛経験のないわたしが、いきなり男性…しかも二人と同居することになるなんて。
人生って本当に、何が起こるか分からないんだなぁ…。
────
「なー麗ー、俺今すげー懐かしい気分なんだけど」
「ふーん。で?」
「俺高校全寮だったじゃん、そん時もさー」
「ふーん。で?」
わたしが今いるのは台所。初体験のIHに四苦八苦しながら、夕食の支度を進めていた。
対面式になっている作業台の真正面はダイニング。
中央に置かれたテーブルを挟み、向かい合って座るご主人様たち。
広い空間だけれどさほど離れてはいないため、彼らの会話は筒抜けだった。
椅子にもたれ掛かりながら楽しそうに話す流星さまと、手にしたスマホから目線を離すことなく、冷淡に言い放つ麗さま。
テーブルの上には、500mlペットボトルが5本ほど置かれていた。そのすぐ側では流星さまが一本一本の蓋に何か書いている。
「私物には目印付けろって言われてさー。俺はRって書いてたんだよね。今回も書いとくわ」
彼はいつでもマイペース。
冷たく返されてもお構い無しだ。
ああ、流星 のRかぁ…。… ん?
「は?俺もRだけど」
麗さまが顔を上げすかさず突っ込んだ。
……ですよね。わたしも思いました。
「あ」
気づいた流星さまが手を止め小さく声を漏らす。
既に全てのボトルにはRの文字が…
「バーカ」
麗さまは短くそう言い(というか吐き)捨てると、再び目線を画面へ戻した。
「まーいっか。これ俺のなー」
別に誰が飲んでもいーけど。と、指先をキャップに充て左右に軽く揺らしながら流星さまは無邪気に笑った。
………。
その記名も、後々『面倒臭い』という理由でされなくなるのだけれど。
隙がなさそうに見えて、ちょっと抜けている。
彼のそういうところが、わたしは好きなんだ。