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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
「…これ…どなた、ですか…」
わたしが震える手で、差し出したもの。
それは、一枚の写真だった。
────────
「どこで見つけたの、未結ちゃん」
「あの…流星さまのお部屋…で…」
リビングのソファーに座る麗さまは、渡した写真に目を落とした後、そばに立ち尽くすわたしを睨みつけるように見上げた。
写真。そこに写っていたのは流星さまと…女の人。
──ほんの、数十分前だった。
──流星さまのクローゼット。
洗濯物を所定の位置に戻し、扉を閉めようとしたときだった。突然『それ』はひらひらと舞い降りてきたんだ。
クローゼット内部の収納棚は、天井まで届く位置まで設えてある。多分その辺りから落ちてきたんだろう。
流星さまはお気に入りをずっと使う。そして要らない物はすぐ処分する。だから部屋は物が少ない。しかも…意外かもしれないけど、彼は掃除も自分でしてしまう。
喘息持ちの彼にとって埃は大敵。小柄なわたしは届かないし、台に乗ってまでやらなくて良い(彼曰くわたしは"抜けている"ので、落っこちそうで怖いそうだ…)と言われていたし、わたしからは死角になることもありその場所に注意を払ったことはなかった。
今までもあったのかな。何だろう?何かのメモ?
床に落ちたそれを拾い、何の気なしに裏返す。
そこには──
気づいたら写真を胸に抱き、廊下に飛び出していた。
呼吸は荒くなり、心臓は破裂しそうな程に高鳴る。
…誰?この人は、誰?
今は21時。流星さまはまだ帰っていない。居てもたってもいられず駆け出し…麗さまの元に来てしまったのだ。
───────
「…そうなんだね」
俯いてしまう。麗さまも片手は写真、もう片手は口元を押さえたまま押し黙ってしまった。…長く重い沈黙が流れていく。
写真の人。年齢は…わたしと同じくらいかな。綺麗、というより…かわいい、人だった。浮かべている笑顔はとても朗らかで頬は桃色で…とても幸せそう。
隣に写る流星さまも… 愛おしむように頬を寄せている。その表情は穏やかで、柔らかくて。
お互いがお互いを好き。それが、伝わってくる。
…だから…たぶん、きっと……
「これ」
── どれくらい経ったのか。
ついに沈黙は破られ、次に出た言葉が胸に突き刺さった。
「誰だとしても、未結には関係ないよね」