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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
全てが嫌になった。
いっそ何もかも捨てて、失踪しようかとも思ったんだよね。でもできなかった。
だってそーだろ?俺がコケたら、有建の従業員とその家族、それこそ一体どれだけの人間路頭に迷わせんだよ。それ考えたらできるわけない。
お飾りだお坊っちゃまくんだ言われようが、そのくらいの覚悟は持ってる。会社のトップはこの俺なんだ。
─ああでも駄目なんだよ。
幸がいない。幸はいない。
金積んでも何をしても
幸だけが手に入らない。
あんなに好きだったのに、好きだって言ってたのに
どうして居なくなるの?なんで俺から離れてくの?
あんなに温かかった体がなんでこんなに冷たいの?
あの笑顔を見せて。お願いだから。
前に言ったよな?『一人死ぬと淋しくて三人連れてく』って。
渇望したよ。どうか連れていってくれって。
もう楽になりたい。
見たくないもんばかり視えるのに幸は見えない。
感じることすらできない。
幸に会いたい。幸に会いたい。幸に会いたい。
そんな思いが暴走してね。
会社の屋上から飛び降りようと思った時があったのよ。
でも自分で絶ったら、堕ちるのは違う場所。
それこそ幸には永遠に会えなくなる。
生きることも死ぬこともできない。
やり場のない気持ちだけが容赦なく溜まって。
仕事に打ち込んでも、物に当たっても、吐きながら女何人抱いても、一向に晴れない。でもそれしか出来ない。どうしていいかわからない。
思い知ったよ。俺も結局、親父や椎名と同じだって。
自分を癒すためには、当たり散らして、周りを傷つけることしか出来ないんだって。
生まれて初めて自分が嫌いになった。
でも自分からは逃げられない。
闇の中でひたすらもがいてた。
そこに差し込んだ一筋の光。
「それが、未結だったんだ」