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BeLoved.
第43章 【彼の根底にあるもの。1】
「おまえ、鼻水ひっでーぞ」
熱くなった顔の中心に、ひんやりしたものが当てられた。ウェットティッシュだ。
鼻水と涙でぐっちゃぐちゃになったわたしの顔。流星さまは苦笑しながらそれを全部拭い去ってくれた。
「──って、俺のせいか。ごめんな」
「りっ…りうれぇっ……、ぁらひ…っ」
「何言ってるかわかんねーよ」
無理して喋んなくていい。頭を撫でてくれながら、彼は言葉を続けてくれた。
「…俺さ、未結のそーゆーとこが好きんなったんだわ」
「…ぶぇっ?」
喜びも怒りも哀しみも楽しみも、何もかもとてもわかりやすくて。嘘がなくて、裏がなくて、呆れるくらい、素直で。
『生きている』ことを全身で表現していて。
そこにいるだけで明るく照らし包み込んでくれる、光。
それがわたしだったのだと、彼は改めて言ってくれた。
「眼中なかったんだけどなー。こんなチビ」
「ち…?!ぃおい…」
「ひどいかー?…まー確かに最初は幸とどっか重ねてたかもしんねーけど。今は違うよ。今は未結のことしか考えてないし、未結しか抱きたくねーし、抱けない」
「……」
「言ったろ。俺はセックスが好きなんじゃない、『未結』とするセックスが好きなの。未結が"生きてる"ってことを、一番実感できるから」
──見つめられる。
「幸せだよ」
それは、わたしが大好きな、彼の瞳。
さっき、無理矢理されていた時のものとは違う。
彼本来の…鋭いけれど、まっすぐで、優しい瞳。
そこにわたしだけを映して。
「愛してる」
「っ…あ…」
…返したかったのは、彼のそれと同じ言葉。
だけどそれは絶対に言ってはいけない言葉。
彼がその瞳に写しているのはわたしだけ。
でもわたしが写すのは、彼だけじゃ…ない。
「いーよ」
流星さまはそれ以上何も言わず、…わたしにも言わせず、ただ抱き締めてくれた。…全てを受け入れるように。
「俺は未結が生きてればいい」